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今回は、私も含めて皆さんが心配しているテーマです。
痴呆という言葉は一種の恐怖感と、暗いイメージを与えています。ボケといったほうが分かりやすいかもしれませんが、医学用語である「痴呆」はすでに社会に完全に溶け込んでいるように思います。
もともとは正常であった人が、物覚えが悪くなったり、性格が変わったりしてしまうのが痴呆の症状です。
最近物忘れがひどくて困ると診察室でこぼす方の多くは痴呆ではありません。
痴呆の人は、自分自身の記憶障害や性格の変化を自覚していないことがほとんどです。
皆さんがなりたくないと思っているこの痴呆の原因は何でしょうか?
痴呆の原因はいろいろありますが、一番分かりやすいのは脳血管性痴呆です。
これは、脳の小さな血管がつまってしまうことにより小さな梗塞が多発することによって起こります。
動脈硬化のある人に起こりやすいので、比較的高齢で、高血圧・高脂血症・糖尿病などがある人に起こりやすいのです。
皆さんがよく耳にするのはアルツハイマー型老年性痴呆の方だと思います。
「アルツハイマー」という言葉は、痴呆と同じ意味合いで一般的に使われているようです。
実はアルツハイマー病という病気があるのです。これは若年性痴呆ともいわれ、40歳くらいから痴呆症状の出てくる病気です。
このアルツハイマー病と症状が似ているけれども65歳以上の高齢者に起こった場合をアルツハイマー型老年性痴呆と呼ぶのです。
少し話が横道にそれてしまいました。では、アルツハイマー型老年性痴呆の原因は何なのでしょうか?
この原因がよくわかっていないのです。
ただし、結果として脳内にあるアセチルコリンという物質が減少していることがわかっています。
このアセチルコリンというのは、神経からの命令が筋肉に伝わる時にも使われます。
大脳の中では特に前頭葉に多く存在しており、物事を考えたり、記憶したりする時に必要な物質だと考えられています。
アルツハイマー型老年性痴呆の患者さんの大脳では、このアセチルコリンが不足しているのです。
しかしその原因がわからない。その原因を世界中の研究者が探しているわけです。
アセチルコリンが脳内に不足しているのであれば、アセチルコリンを脳内に入れれば痴呆は治るのではないか。誰もが考えるところです。
以前には、ねずみの脳内にアセチルコリンを直接注入し、その学習能力が上がるとの発表が多くありました。
そのため、人間でも同じように脳内のアセチルコリンを増やしたいとの熱意が「アリセプト」という薬を作り出しました。
この薬を服用すると、痴呆の程度が軽くなり、進行を遅らせられると報告されています。
しかし、なんといってもアセチルコリンの減少する原因がわからなければ完全に治すことはできないでしょう。
痴呆によく似た症状を出す病気についてお話しましょう。時々病院に、一週間くらいの間に「痴呆」になってしまい、自分で歩くこともできなくなったと家族が患者さんを連れてくることがあります。
一週間でそんなに進行してしまうのはいわゆる痴呆ではありません。
よくあるのは、「慢性硬膜下血腫」といって、頭の中に少しずつ出血し、脳を圧迫することによって起こるものです。
これは、転んだりして頭を打ち、その後数ヶ月してから症状が出てくるのです。
また、脳腫瘍の時にも痴呆症状が出ることがあります。
したがって、痴呆かなと家族の方が疑った場合、医師に相談してMRIやCTで一度は脳を調べてもらった方が良いかと思います。
老年性痴呆は誰でもなる可能性のある病気です。
ある意味では一種の生理現象なのかもしれません。
痴呆の原因究明が進み、いつの日か痴呆という言葉が無くなるのかもしれません。
しかし現状では、痴呆にならないため、慢性疾患のある方はきちっとコントロールし、動脈硬化を進めさせない努力が必要でしょう。
また、毎日の生活に対し前向きに取り組む姿勢が大切なような気がします。
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